2019/01/04
年を重ねると誰にでももの忘れはでてきますが、正常の老化過程なのか、病的なものかの区別は必ずしも容易ではありません。ものわすれの自覚だけで検査上異常がないレベルを主観的認知機能障害、軽い認知機能の低下はあるが日常生活には支障がないレベルを軽度認知障害といい、認知症の前段階の可能性があります。実際、アルツハイマー病は診断される10年、20年前から脳の変化が始まっているといわれており、軽度認知障害の10%は1年で認知症に移行するといわれています。逆に、軽度認知障害の1/4は生活習慣の改善などで正常にもどるというデータもあります。
認知症には、アルツハイマー型、レビー小体型、脳血管型、前頭側頭型などいくつかのタイプがあります。また、ビタミン不足、ホルモン異常、炎症が認知機能の原因になることもあり、内科的治療で改善が期待できます。正常圧水頭症は外科手術で改善できる認知症です。進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核症候群などの神経難病も認知症の原因になります。嗜銀顆粒性認知症、神経原線維型認知症は、アルツハイマー型認知症より進行が遅い良性の疾患で、高齢者の認知症の5〜10%を占めるといわれていますが、臨床的にアルツハイマー型認知症との鑑別は難しく、アルツハイマー型認知症と診断されている場合が多いと考えられます。
当院では、日本認知症学会認定認知症専門医として、病歴、神経所見、神経心理検査、採血、脳MRIから認知症の診断を行います。必要に応じて髄液検査(アミロイド蛋白、タウ蛋白の測定)、脳波、脳血流シンチ、ダットスキャンなどを追加し、鑑別診断を行います。脳波、シンチ検査は当院に測定機器がないため、近隣の連携病院に検査依頼いたします。
認知症の治療薬にはいくつかありますが、いずれも神経伝達物質の働きを修飾することで認知機能の働きを改善するもので、神経細胞の変性を抑制するような根本的な治療薬ではありません。認知症の進行を少しでも抑制するために、バランスのとれた食事、適度な運動、よい睡眠、社会的な交流や役割をもつこと、好奇心をもって新しいことにチャレンジをすることが大切です。当院では、生活指導を含めたトータルな治療をこころがけています。希望者には、言語療法士よるリハビリを施行いたします。介護保険を利用し、ご家族の介護負担を軽減します。生活習慣病などでかかりつけの先生がいらっしゃる場合は連携をとって治療を進めてまいります。